【スペシャル対談】日本の「多文化共生」が目指すべき未来とは?~アフリカ出身・京都精華大学サコ学長と在住外国人の課題解決に取り組むGTN代表・後藤が大学と民間の立場から語る~ - DIVERSITY TIMES - 外国人の"今"を知って好きになる。

【スペシャル対談】日本の「多文化共生」が目指すべき未来とは?~アフリカ出身・京都精華大学サコ学長と在住外国人の課題解決に取り組むGTN代表・後藤が大学と民間の立場から語る~

2021.09.15

 

日本に住む外国人の数は290万人を超え、様々な国籍・民族の人々と共に生きる「多文化共生社会」の実現に向けた取り組みがますます重要になっています。しかし、留学生をはじめ在留外国人が日本で生活するうえで抱える社会課題は未だ多く、民間・大学・地域が一体となったアプローチが求められています。

日本で初めてアフリカ出身者として学長となった京都精華大学のウスビ・サコ学長と、創業から一貫して外国人専門を掲げ、家賃保証をはじめ日本に住む外国人に必須のサービスを提供するグローバルトラストネットワークス(GTN)代表の後藤裕幸。今回、多文化共生社会の実現を目指す二人の対談が実現しました。

 

 

はじめに ー GTNについて

後藤 裕幸(GTN代表取締役社長、以下:後藤):私達が何者か分からないといけませんので、ちょっと紹介をさせていただきます。

外国人の方が日本に来て、まず最初に戸惑うのが部屋探しなんですよね。「外国人だから」という理由で入居を断られてしまったり、日本人の保証人が必須だったり、なかなか部屋を借りることができずに困っている方がたくさんいます。

2006年にこのGTNを立ち上げたのも、私自身が学生時代にビジネスパートナーの留学生たちの保証人になったことがきっかけでした。困っている外国人を助け、日本の国際化に貢献したいという想いから、外国人専門の家賃保証事業を開始しました。以降、賃貸仲介、生活サポート、携帯電話サービスやクレジットカードなど日本での生活に必須となるサービスを提供し、多くの外国人の日本での生活をサポートしています。

現在、家賃保証事業では累計20万件超の利用実績があり、日本に来る多くの外国人留学生にもGTNの保証を利用いただいています。

ウスビ・サコ(京都精華大学学長、以下:サコ):こういう家賃保証のシステムができてからみんな楽になったんですよね。以前は、私たち教員も保証人になってくださいと言われました。例えば卒業してからもなってくださいという時があるんですよ。就職先に引っ越すときなんかで、それはちょっと厳しいかなということもありましたね。

(※京都精華大学は2015年より留学生向けにGTNの保証を案内している)

後藤:昔はたまにいる外国人だからよかったものの、今は半分以上が外国人留学生という場合もありますもんね。

サコ:そうですね、ただ今でも連絡人が必要みたいですよね。私も何人かの保証人をやっているんで、たまに電話がかかってきて「あの人帰国したけど鍵を返していない」とか。

後藤:御校をはじめ、現在は63大学に弊社の保証を使っていただいています。日本は少子化になってくるので、日本の大学をしっかりケアしないとこのまま学生が減っていってしまいますよね。

サコ:当校の留学生は800~900人で、比率は24%くらいです。研究生なども入れるともっといるでしょう。

 

外国人の多様化について

後藤:日本のダイバーシティ論は、男性に対して女性の比率をどのくらいにするかというような議論ばかりになってしまっています。なかなか女性を受け入れられないなら、外国人を採用するかという企業がまだまだ多い。むしろダイバーシティというのは、違う人たちがいっぱい入ってくることで、新しい気づきや異なる価値観が生まれる。どんどんマーケットが多様化するなかで、画一的な組織ではなかなかマーケットには対応できないよねというところです。

GTNは社員の7割が外国籍(池袋のGTN本社で撮影)

サコ:みなさん外国人をマスで評価するところがありますよね。「韓国人たち」「中国人たち」といったように。でも今の留学生は恐ろしいほど多様化している。うちの中国人留学生でも、ハンガリー生まれでイタリア育ち、英語・イタリア語・フランス語・中国語・日本語ができるという人がいます。ある韓国人留学生も高校はカナダなんですとか、ここにたどり着くまでに非常に多くの経験をしています。日本の学生はだいたい一本筋で来ているので、そういう意味でも留学生は多様化を見せてくれる一つの対象だと思いますね。

当校では、留学生窓口は全部廃止にしたんです。みんな同じ学生だと考えているので。今我々がやっているのは「どんな試験も留学生にも同様に出してください、そのかわり日本人と同じように指導するよ」ということです。試験の結果を見ると、国語は留学生がトップの場合もある。要は比較をしていないだけなんです。授業をしていると一番物足りなさを訴えるのは留学生です。

韓国だと、アニメの学部に入りたいといって塾に行っている子もいます。日本語もかなり出来て、留学生も低年齢化が進んでいる。受験のための短期滞在ビザもあるので、コロナ前は試験だけ受けて帰るという方も多かったです。必ず日本語学校に行ってから大学に行くのではなく、本国から試験を受けて直接大学に入る人も増えている。これからオンライン試験も増えてくると、今まで以上に留学生の多様化が進むでしょうね。

 

学生のキャリアデザインについて

サコ:キャリアデザインセンターを作り、留学生の色々なキャリアプランを想定してアイデア出しをしているがなかなか難しい。日本だと、漫画家になりたくてもそれに対応するビジネスのシステムがなくビザもない。卒業して、作家やアーティストになりたいという外国人を受け入れてあげる、そういう人たちを落ち着かせるシステムが無いんだと思うんです。部屋が借りられないし、ビザも下りない。もう一回ビザを取りたくてもどこかに所属しないといけないし、半年ごとにしか出ないし、というような問題を抱えている。

政府は「留学生30万人計画」を掲げてきて2018年に達成はしているけど、就職とか出口作りができていない。うちみたいに、アーティストとか漫画家とかアニメーターになりたいって人達はなかなか拾いきれない。

後藤: うちの会社だったらぜひ採用したいですね。例えば中国語ができる、英語ができる、そしてアニメやクリエイティブなことができるとなればすごく欲しい人材ですね。

サコ: 彼らはやっぱり、ある一定の期間日本にとどまって仕事をしたっていう経験が帰国する時にすごい実績になるわけですよ。あとは日本の社会のことがわかるので、そういうことも大事。

後藤: まさにこういったクリエイティブなところが、AIだなんだといわれているなかで、人間の一番の価値になっていくんじゃないかと思います。

サコ: お互いにコラボができると嬉しいですね。

 

大学と地域で一緒に盛り上げていくべき

サコ: 京都には5つくらいの芸術系大学があるけれど、その芸術を売る場所があまりないんです。日本ってそういうギャラリーも少ないし。もう少し地域全体が一緒になって、例えば空き家を学生の芸術活動のスペースにしたりとか、そういうことを学生同士が手を組んでできるようになればいいと思うんですよね。

京都精華大学

ボストンでは一流大学を出た学生がその町に残るんですよ。残って好きなことをやって、いつの間にかFacebook作ったとか、Apple作ったとか。最初は好きなことを勝手にやってるだけなんですよね。日本って、そういうのを町と大学は分離しているわけですよ。だから本当は京都に残ってもらって、この町も学生たちが安心して生活できるような制度やシステムを作って、企業もそれをサポートすべき。これは別に日本人も留学生も一緒やと思うけど今は全くないんですよね。

 

外国人受け入れにおける課題

後藤:日本の大学を卒業したら全員にビザを出すべきだと思っています。日本語能力試験N5の高卒の人たち(技能実習生)を何十万人も入れているのに、新しい特定活動46号ビザはN1じゃないと取れないんですよね。それはないだろうと。日本の大学を卒業してちゃんと馴染んでいる、そういう人たちに日本に残ってもらうべきだと思います。

サコ:昔から、見て見ぬふりしているところありますからね。真面目に留学に来て、頑張って4年間勉強して卒業した人をもうちょっと大切にしたい。

後藤:本質との矛盾がまだ多いんですよね。本当は、技能実習はやめて特定技能制度に一本化すればいいのに、中途半端に残すから技能実習生は増えていくし。面談は絶対に直接行わなければならないとか、なかなか変わり切れない。もうちょっと遠隔化できないかとかいろんなことを国に問いかけたんですけど、動かない。

サコ: スピードがないんですよね。私も30年前に来て、日本は東南アジアのリーダーシップをとっていくと期待はしていたけども、今はもう中国・韓国・ベトナムなど他の国の方がめちゃくちゃスピードが速いですよね。日本は制度が重いし、なんかもうわかりにくいし、別の国でやっちゃった方が早いっていう風に皆さん思うわけですよね。コロナ禍で留学生が入ってこないから一部はオンライン入試に変えなきゃならないとなると、文科省から300ページくらいのガイドラインが付与されるんですよね。

リスクは、100%は回避できないんですよ。20%くらいのリスクは背負ってもやらなければならない。ヨーロッパの大学に聞いたらもう実技までもオンラインでやっているといっていて。そういうのを、その時期その時期に対応していかないと。今のコロナ禍では、既存のルールはもう通用しないと決めなければならない。だから、新しいルールの中でどうやってオンラインをするかってことですよね。

昭和とか明治とかから続くルールを変えない前提で、どうやって新しい時代に合わせる?ってそれは絶対無理でしょう!移り変わっていくのにね。

 

サコ学長の日本への想い

サコ: 「課題がある」イコール「やりがいがある」んですよね。私はほんとに可能性を感じています。

日本の外国人に対する様子を見ていると、他の国だったら宗教上、歴史上で互いに嫌い・排除する・受け付けないってことがあるんですが、日本はないんですよ!情報が分からないから「近寄りたくない」「関わりたくない」「処理の仕方が分からない」、だからGTNさんがやっているような仕事が日本では重要なんですよね。いわゆるファシリテーターというか、コミュニケーターという役割が必要。

ウスビ・サコ学長(京都精華大学)

日本は柔軟性があるんですよね、ポリシーがない分。良いか悪いかは置いておいて、こだわりが強くない。一方で、その分自分たちが支配されるんじゃないかっていう怖さもあるのかな。それも距離の取り方ですよね。ある程度安心させるようなコミュニケーションを外国人も日本人と取っていった方がいいと私は思っているので、そういうのを大学や地域社会も含めて取り組んで、GTNさんとも手を組んだりできるともっともっと外国人の活躍っていうのが見えてくると思うし。

なんでこんな発想になるって思うぐらい面白いいろんな発想が社会を豊かにしていくので、そこを大切にしていけばいいかなと思っています。

 

GTN代表・後藤の想いと創業の背景

後藤:私の学生時代、日本人の大学生は合コンどうするとかそういった話だったのに対して、外国人の留学生はシリコンバレーがどうだとか韓国のITがこうだとかの話をしていた。そんな時に日本人2人、韓国人2人、中国人1人で起業して、そこから外国人との関わりが始まって今に至るのですが、とにかくみんな優秀だったんですよね。視野がグローバルで。九州から上京した田舎者からするとすごく刺激的で。私が海外に拠点を持つ何百人という会社の代表になれたのもそういうことだと思うんですね。彼らとの出会いがなければ、100%今の私はいないので。

後藤 裕幸(GTN代表取締役社長)

今あるべき日本の姿というのは、まさしくサコ学長がおっしゃった通りだと思います。私も夢はでかく持ってはいるんですけれども。民間としてできること、大学だからこそできることそれぞれあると思いますので、解決に向けて一緒に取り組んでいきたいですね。

本日はお会いできて本当に良かったです。

 

■京都精華大学HP
https://www.kyoto-seika.ac.jp/

 

※ 本記事は2020年10月1日付でPR TIMES STORYに公開いたしましたものの再掲です。

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