留学生の先輩として成し遂げたいこと ~後輩に味わわせたくない日本での苦労~ - DIVERSITY TIMES - 外国人の"今"を知って好きになる。

留学生の先輩として成し遂げたいこと ~後輩に味わわせたくない日本での苦労~

2022.08.23

 

皆さま、こんにちは。DIVERSITY TIMESライターの齊藤です。
今回は、在日留学生を対象とし、賃貸仲介にとどまらない多様なサービスを多言語で提供する株式会社インフィニストンをご紹介します。
ご自身も留学生として中国から来日された代表取締役の藤沢 雲龍さんに、当初に苦労された経験から今後の展開までお伺いしてきました。

 
__まず、インフィニストンさんがどういったサービスを展開していらっしゃるのか、改めてお聞きしてもよろしいでしょうか

藤沢 雲龍(以下「藤沢」):弊社は2018年より中国からの留学生を対象に賃貸仲介業務を始めました。

弊社はお部屋探しだけでなく、留学生の生活を見守るということを理念に掲げています。
そのため、新規で入国される方に対しては次の3つのステップをご用意させていただいております。

第1ステップは入国前のサポートです。
お部屋の情報だけではなく、留学生ご本人やその保護者の方の不安が少しでもなくなるように、日本についての情報を共有しています。SNSでの発信やオンラインでの説明会ですね。

 
__本国にいながら日本の最新情報がわかるんですね。

藤沢:そうですね。不動産賃貸仲介業者としての役割でもある「日本生活ルールの説明などの基礎知識の発信」が主な目的ですが、これを通じて、日本へ来ることがより楽しみになってくれればとも考えております。

第2ステップは入国時です。必要な場合は空港までお迎えにあがり、それからお部屋の契約手続に必ず必要な銀行口座開設・携帯電話契約、そして新規入国者にとって最初の課題である日本語によるライフライン(水道・電気・ガス)の開通手続もお手伝いします。
また、希望があればお部屋周辺の店のご案内や日常生活品の買い物にも同行します。

第3ステップは入居後です。
入居後1ヶ月間は週に1度、お電話して困っていることがないかヒアリングするコミュニケーションを取っています。
留学生が困りごとを相談できる場ってなかなか無いんですよね。なので、弊社スタッフが相談に乗ります。僕も含め、営業部門の社員は全員が留学経験者なので、その経験を活かして話を聞いたりアドバイスできていますね。

また、定期的に日本語サロンを開いています。弊社が場所を提供し、提携先大学の日本人学生を呼び、留学生に日本語を教えたりおしゃべりしたりする場ですね。

多言語を話せる弊社スタッフも参加して、現在は中国語、韓国語、英語、カザフ語、ウズベク語、タジク語、トルコ語に対応しています。

 
__自分の母語で説明してもらえるのは、留学生も安心ですよね。

藤沢:そうですね、最近は日本生活に関する細かいルールって教育機関様などでも一生懸命発信していただいておりますが、入国前の学生はどうしても「日本に行ったらこれやりたい!あれやりたい!」ばかりで、あまりそのあたりには関心も持たない学生が多いのが現状です。

特に住環境でのルールも、日本人にとっては常識ですが外国人にとっては非常識なルールも多々ありますから。
入国前からきちんと理解しておくことで、安心して新生活をスタートして欲しいという思いをもって弊社スタッフ一同、先輩の立場で理解してもらえるように努力しております。

 
__留学生から寄せられる相談はどういった内容のものが多いですか?

藤沢:一番は、単純に何か問題が起きた時に「どこに・だれに」相談すればよいかわからないということです。あとは、言語の壁もあって友達づくりが難しいということもよく聞きますね。そのため、弊社は日本語サロンを多国籍の友達づくりの場として日本語サロンを開催しています。

 
__日本語の先生というわけではなく、日本の大学生と知り合えるのはいいですよね。

 
__藤沢社長ご自身も留学生として日本にいらっしゃったとのことですが、やはり困りごとがありましたか?

藤沢:18歳の時、中国の大連から日本の成田までやってきたのが初めての海外渡航でした。当時の中国は今ほど経済的に豊かではなかったですから、親に援助を頼むわけにもいきません。なので留学生はみんなアルバイトをしていました。

自分も情報誌を見て探したのですが…面接へ赴いてみても、ほとんど日本語がしゃべれないということで採用してもらえませんでした。友だちもいないし収入もない、という状態が1年ほど続き、とてもショックでした。
100円の卵と10円のもやしと…夕方のセールのために自転車を走らせる日々でしたね。今思い出してもつらいです。

 
__経済的にかなり苦しい時期を過ごされたんですね。

藤沢:そこで強く感じたのが、やはり言語を習得することは重要だということです。今ほどSNSも使われていなかったので、言葉がわからなければ情報が得られなかったんですね。日本語学校で出会った今の妻にはその時から支えてもらっていますが、周りのサポートを得て一刻も早く日本の社会に馴染みたかったです。

 
__お住まいに関してはいかがでしたか?

藤沢:私は寮に2箇所、賃貸で4箇所に住みました。最初に住んでいた日本語学校の寮は3ヶ月で出なければいけなかったので、住宅の情報がよくわからないまま中国人が経営する寮に入りました。

2.5畳で窓無しの部屋に半年くらい住んでいました。トイレ、キッチンは共用で、衛生環境もよくなかったので、早くアルバイトを見つけて引っ越したかったです。

そういう環境に暮らしていると、勉強や生活すべてに悪影響があると感じました。「日本の生活はつらい」というような感覚も生まれてしまいますね。

賃貸仲介会社に相談に行った時は、連帯保証人が必要と言われて戸惑いました。そんなに責任の重いものだとも知らず、アルバイト先の店長にお願いしたのですが断られてしまいました。

それでまた別の場所を探して、幸いにも日本人の連絡先があればいいというところを見つけた、今度は日本語学校の先生にお願いして、部屋を借りることができました。

苦難が多かった来日初期の藤沢社長

契約内容や流れを理解するのはとても難しかったです。言語の問題もありますし、非効率的だと感じる部分もありました。

私自身のそういった経験から、これより先に日本へ来る留学生にはスムーズな生活スタートを切ってほしいという想いを持つ現在に至ります。

 
__入居初日は電気、ガス、水道なしで過ごされたというエピソードをホームページに書いていらっしゃいましたね。

藤沢:その日のことは今でも覚えています。中国だとそういった契約は個別にする必要がないので驚きました。やはりそういった生活に関わる制度の違いは留学生の困りごとになりやすいですね。

不動産会社のスタッフも、私が契約内容をちゃんと理解できているかどうかを確認しなかったり、またはその確認すらできなかったり…。契約上でのこのようなことは、のちのトラブルになる可能性が高く、その経験が弊社で母語対応のサービスを導入した理由でもあります。

2年くらいで日本での生活にも馴染み、語学学校卒業後は明海大学で不動産について学びました。在学中は安定してアルバイトを続けられましたし、アルバイト先の方や学校の先生、友人にも恵まれていて、楽しく過ごしました。

 
__大学進学時から不動産に関わることは決めていらっしゃったんですね。

藤沢:はい。先ほどもお話ししたとおり、日本で留学生活を送る住環境は、本業である学業にも影響が出るほどとても大切だと感じていましたので。

大学卒業後は不動産会社に就職しました。その会社も留学生向けのサービスを展開していたのですが、その事業を畳むということだったので独立を決めたんです。

 
__そこで起業に踏み切れるのはすごいですね。

藤沢:自分自身が不動産業界に身を置いて、予想以上に様々なトラブルが起きていることを知り、業界において外国人入居者に対するイメージを良くするのが私の使命でもあると考えたんですよね。なのでこの事業に注力したいということで、前職の社長にも相談に乗ってもらいながら始めました。

 
__留学生にとっては本当に心強いサポーターでいらっしゃいますよね。

藤沢:弊社には7つの強みがあります。

① 全面的な生活サポート。安心して部屋を借りられて、困ったことがあれば相談に乗れる
② 留学生が必要とする最新の情報を提供
③ 弊社の各部門がさまざまなフォローアップ
④ 不動産業界に限らずたくさんの業界の企業と提携しているので、在日外国人の日本生活におけるあらゆる角度の問題が解決可
⑤ 大阪にも支社があるので、関東・関西どちらも対応可。お引越の相談も可
⑥ 多言語対応(今後はアジア地域に限らず対応言語を増やしていきたい)
⑦ 一般賃貸と学生寮、2つの選択肢でサービス提供可(先月より大手管理会社様の学生レジデンスの入居仲介業務もスタート)

 
__思わず「完璧」と言いたくなるようなサービスの多様さですね。藤沢社長ご自身の経験が反映されているんだろうなと感じました。

接客スペースにはGTNの関わっているポスターの掲示も

藤沢:あんな大変な思いをこれからの留学生に味合わせたくないという気持ちはずっとあります。留学経験のある社員とも留学生の困難を分析、共有、相談して、サービスの展開を考えています。

日本の契約や手続きは他国に比べて難しい、という声をよく聞くので、簡単でスムーズでわかりやすい手続き方法をつくるべく努力していきたいです。

また、留学生には留学だけではなく、日本での就職も経験してほしい、そこでも新たな知識や経験を得てほしいと思っています。

 
__社名の「インフィニストン」にも何かそういった想いが込められているのでしょうか。

藤沢:漢字では「磐石」と書くのですが、英語では「Infinity+Stone」で「無限の岩」になりますね。

あれこれやるのではなく、どうしたら留学生をより良くサポートできるのか、そのことを一番に考えて事業を進めていきたいという想いが込められています。

そうした安定したサービスを展開するためには、盤石な規則が重要だと考えています。
その理想は社員間で共有できていると思います。

経営者としてコロナ禍にどう適応すべきかわからないこともたくさんありましたが、人の縁に支えられてやってこられたと感じております。

 
__ありがとうございます。最後になりますが、今後力を入れたいサービスはどういったものでしょうか?

藤沢:はい、2つございます。

第1は、企業への就職支援サービスを展開します。
創業以来に弊社賃貸仲介サービスをご利用いただいたお客様がすでに4,000人近くおり、その約90%が留学生なので、最近は卒業後の就職相談数がかなり増えております。
現在準備を進めているところですが、留学生として過ごした日本生活の経験を100%発揮して思いっきり活躍できる場を提供してまいります。

第2は、拠点の全国展開です。
先ほども申しましたが現在は東京と大阪の2ヶ所でのサービス展開を行っておりますが、今後は外国人留学生に人気のある教育機関が所在する北海道・仙台・名古屋・福岡での活動を予定しております。
これは弊社が単独で拠点を設置するのではなく、各地域ですでに活動をされている地元賃貸仲介企業様と連携して、弊社資源を共有し外国人留学生のサポートをしたいと考えております。もしこの記事を見て弊社サービスに共感していただき、外国人留学生マーケットに興味がある仲介会社様はぜひご連絡ください。お待ちしております!

 
__まさに初志貫徹ですね。インフィニストンさんのこれからのご活躍を、陰ながら応援しております。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

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